透明な少女の話 - 浅倉透コミュ感想

 

 

 

この文章は、以下のコミュの内容を含みます。
 ・WING浅倉透共通コミュ
 ・【10個、光】浅倉透コミュ
 ・天塵イベントコミュ

また、一個人の解釈であることをご留意ください。

 

 

 

 


浅倉透はどのような人間か、と問われたら、皆さんはどう返すだろうか?
そも、アイドルマスターシャイニーカラーズは、
一言で言い表せない"人間的なキャラクター"が特徴的なコンテンツである為、
このような問いかけ自体があまり良いものではないと思うが。
それを念頭に置いた上で、敢えて言葉にするのであれば、
「無気力、無関心に"近い"人間」だと、私は答えるだろう。

 

 

 

 

浅倉透という人間

 

浅倉透は人生を憂いていた。

 


「人生は長過ぎる」という言葉に、共感できる人間も多いのではないかと思う。
この感覚も、前述した浅倉透の、無関心さから来るものだろう。


浅倉透は何事にも興味が薄く、故に、
退屈な人生に辟易していたのだと、私は考えている。

 

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WING編共通コミュにて 全ての選択肢において同内容の発言あり

 

楽しい時間はあっという間、という感覚は、誰しもが理解できるだろう。
わかりやすく言うならば、その逆である。


心動かされぬ人生は、あまりにも退屈で、長過ぎる。

 

 

 


浅倉透は自分にも他人にも興味が薄い。
これは他人の気持ちを考えない、というわけではない。
寧ろ浅倉透は、親しい人間に対して、気を配っている様子が散見される。

 

会話の際には、相手の気持ちを汲み取ろうという意思があるように見える。

 

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朝コミュにて Pのハンカチを借りた後

 

 


天塵にて、雛奈が放り出した衣装の乾燥を代わろうとする姿勢からも、
他人の気持ちを考えていないようには思えない。

 

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天塵(厳密には【游魚】樋口円香 - 乾かす)にて 雛奈は逃げた

 

しかし、浅倉透はその無関心さから、
誤解を招くことが多いのも事実だと思う。

 

 

 

 

日誌に自分の気持ちを書き綴ろうにも、
自分の気持ちがわからない。
これは自分への興味が薄いからだろう。

 

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WING編共通コミュにて 日誌の内容が簡素

 

 

 

 

自分が何がしたいのかも、わからない。
これも自分への興味が薄いから。

 

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【10個、光】にて 質問が難しい為、あまり良い例ではないが

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天塵にて 花火大会でのライブに、出演したいか問われて

 

 

 

 

突然旅に出ても、心配されるとは思っていない。
他人への興味が薄いから、この程度で心配されると思えないのではないか。
きっと浅倉透は、誰かが突然旅に出ても、然程心配しないのだ。

 

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WING編共通コミュにて 旅に出るという日誌の記述を心配して、探しに来たPへ

 

 

 

 


登る理由

 

何事にも無気力で無関心、感情はあれども、波立つことの少ない凪のような心。
浅倉透はまさに、「透明」という言葉が相応しい人間だと思う。

 

そんな透明な人間の脳裏にも、焼き付いて離れない、
鮮烈な記憶があった。

 

それがあの日の、ジャングルジム。

 

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WING編共通コミュにて 幼少期、公園

 

 

それはきっと、浅倉透にとって、初めての体験だったのだろう。
自分が何をしたいのか、何に興味があるのかもわからなかった少女は、
出逢ったばかりの少年に導かれて、ジャングルジムを登った。

 

自分でもわからない自分のことを理解し、導いてくれた少年。
一緒に登ったこと。てっぺんの景色。達成感。

 

私は浅倉透じゃないから、その感情に名前を付けることはできないけれど。
きっと、その全てが少女にとっての革命で、
幼馴染との約束すら忘れる少女の脳裏に、呪いの如く刻まれてしまった。

 

そして、呪いは数年の時を経て甦り、成長した少女の足を、再び動かした。

 

 

 


浅倉透がスカウトを受けた理由は、ある種冒涜的だ。
アイドルへの興味もない。輝きたいという欲求もない。
ただ彼女は、あの日の少年と、あの日の自分に微かに湧いた情動、
その影を追いかける。
それだけの理由で、首を縦に振ったのだと。

私はそう思っている。

 

 

 

 

 

透明のその先へ

 

シャイニーカラーズには、様々なアイドルが居て、それぞれに物語がある。
自分の憧れに近付こうとする者。
自分の中にある想い、その美しさに気付いていく者。
ただひたすらに輝くことを願う者。
誰かの居場所になろうとする者。

 

 

浅倉透の物語は、そのどれとも異なる。
浅倉透には憧れはなく、夢もない。
アイドルに対する愛も、世界に対する怒りもない。

 

 

きっかけはあの日の記憶だった。
そして、今の浅倉透を動かす原動力は、
登ることを楽しいと思えているから。
てっぺんの景色を見たいから。

 

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WING編共通コミュにて 登っていくことで得られるもの、退屈からの救い

 

 

 

アイドルとプロデューサー、立場は違えど、
ジャングルジムの行きつく先は同じ。
互いの姿が見えて、一緒に登っていることがわかる。
それだけで、浅倉透は登り続けることができる。

 

感情の起伏に乏しい彼女の心に灯った炎は、
他のアイドル達と比較しても、決して大きなものではない。
空で煌々と燃える、星々の光の中では、見えなくなってしまうかもしれない。

 

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【10個、光】にて バスの降車ボタンは、夜にしか気付けない小さな光

 

 

それでも浅倉透は、登り続ける。
胸を焦がすほどの激情もなく、空を塗るための色も持たない彼女が、
あの日灯った小さな想いを胸に、自分の色を探しながら、てっぺんを目指して登っていく。
そして、私達は、例え明るい星空でも、彼女の微かな瞬きを見つけられるように、
浅倉透と共に、登っていく。

 

これはきっと、そういう物語だ。

 

 

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【10個、光】にて 夕空で見つけた星が、夜空に埋もれていく場面より

 

 

 

 

 

小さな世界の中で

 

「天塵」というイベント名の意味は明示されていないが、
私は「都塵」から来た言葉だと考えている。

「都塵」:都会の塵。また、都会の騒々しさのこと。

 


花火の音と光で掻き消される中で、
私は彼女達の中に美しさを見た。

 

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天塵にて 花火の中のライブで、5人だけが見た美しさのこと

 

天塵とは、空の騒々しさ。
それは彼女達を掻き消す花火であり、
彼女達以上の情熱を以て輝く、他のアイドル達であり、
彼女達の絆を脅かす、この世界そのものだ。

 


Straylight.Run()が、アイドルの世界に足を踏み入れた少女たちが、
その世界に抗っていく物語だとしたら。
天塵は、4人の幼馴染が、アイドルの世界に押し潰されないように、
彼女達の小さな世界を守る為に、大きな世界と戦う物語だと私は思う。

 


天塵。大衆の目を惹く大きな光に埋もれながらも、
自分達の世界を壊させないと戦う彼女達に、
微かで、確かな輝きを、私は見たのだ。


私にとってのノクチルは、世界と戦う美しさのことだ。