お勧めの漫画③(短編)

 

 

指標としてはこの記事に記載している「楽しさ」「興味深さ」「美しさ」の3つの要素を軸に、一応各5段階評価にしている。

 

個人差が激しい「美しさ」については、ある程度広めに見ているつもりだが、
「人物」「台詞」「展開」「絵」「愛」「怒り」「詩」辺りを重視している。

 

全てをまとめて紹介すると非常に長くなる為、
物語の長さで3つに分けた。今回は短編。

 

長編:かなり長めのもの。20巻程度を目安。
中編:10巻前後で完結済みのもの、若しくは連載中である程度巻数が少なめのもの。
短編:5巻前後で完結済みのもの。

 

 

映画大好きポンポさん (全6巻)

映画大好きポンポさん (ジーンピクシブシリーズ) コミック – 2017/8/26

『僕が無理をすることで映画が高みに至るのなら、フィルムに熱い魂が宿るなら。この命なんていくらでもくれてやる。』

    楽しさㅤ:★★★★★
    興味深さ:★★★★★
    美しさㅤ:★★★★★

映画に必要な才能と環境、全てを持ち合わせる映画の申し子「ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネット」通称ポンポさんと、ポンポさんのアシスタントで社会不適合者の映画フリーク「ジーン・フィニ」が、映画を撮る物語。

創作の経験・知識がある人や社会に馴染めない人、単純に映画が好きな人には特に響くものが多いと思われる。映画が嫌いな私でも楽しめるので、どれかが当てはまらなくても無問題。

話の展開は王道で、非常に読みやすい。
絵柄もポップで可愛らしく、演出も上手い。
映画作りに関する知識や創作に対する哲学など、興味深さもある。
人物や、台詞、展開、思想の美しさが強い。

多くの人が好きになれる作品だと思うが、加えてpixivで1巻を無料で読める点が素晴らしい。取り敢えず読んで欲しい。読めばわかる。

ちなみに映画も出来が良いので、映画から見ても良い。
単行本購入時は購入の順番に注意。
1→2→3ではなく、1→2→フランちゃん→カーナちゃん→オムニバス→3の順番が正解。
特に3巻は最後に読まないと、知らないキャラが突然出てきたりするので注意。

 


あの頃の青い星 (既刊4巻)

あの頃の青い星1 Kindle版

『私ね、潮の満ち干の繰り返しのことも、岩にくっついてる貝のことも、魚が泳ぐ姿が綺麗だってことも。

瀬川さんに出会って知ったよ。幻滅なんてしないし、私はこれからもずっと、瀬川さんが好きだよ。
瀬川さんも好きなものは好きなままでいてよ。自分にとって大切なものは、ずっと大切にしようよ。
そのほうが絶対、幸せでいられるから。』

    楽しさㅤ:★☆☆☆☆
    興味深さ:★★☆☆☆
    美しさㅤ:★★★★★★

平凡だが八方美人で友達の多い「構本海」と、才色兼備だが人付き合いが苦手で友達の居ない「瀬川晶」が、互いの美しさに惹かれていく物語。

全巻Kindleで無料なのですぐに読める。
とにかく美しい。この作品が書籍化していないのは、この世界が抱えるバグの一つです。

絵も綺麗で漫画も上手。人物や言葉選びも美しい。
人間について描かれている漫画なので、当然楽しさは弱いが、それを補って余りあるほどの美しさ。

 


とある飛空士への追憶 (全4巻)

とある飛空士への追憶 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス) コミック – 2010/1/12

『言葉を交わしてはいけないの?あなたと私は同じ人間よ。』

    楽しさㅤ:★★★★☆
    興味深さ:★★★☆☆
    美しさㅤ:★★★★☆

流民の生まれ故に迫害されてきた凄腕の飛空士「狩乃シャルル」は、自国の皇子の婚約者「ファナ・デル・モラル」を乗せ、単機で大海を翔破せよとの命を受ける。
幼少期、ファナに救われた記憶を胸に生きてきたシャルルは、彼女を無事に送り届ける為、空を駆ける決意をする。

絵も漫画も上手く、話の流れもシンプル。
良い意味で全体的に軽い作品で、4巻で完結することもあり非常に読みやすい作品。
全体的に纏まりが良く、受け取り手次第でバッドエンドにもハッピーエンドにもなる終幕で、読後感がとても良い。

原作が小説ということもあり、台詞は多くを語ってはいないが、人物の心の動きや地の文に美しさがある作品だと感じる。

 


束の間の一花 (全3巻)

束の間の一花(1) (KCデラックス) コミック – 2021/4/23

『本当はわかってるのだ。先生とはすぐに別れる時が来ることも、私たちに救いなんてないことも。それでも、このあたたかさを手放せないのです。』

『「さよならだけが人生」ならば、いつか全部が離れていくだけが人生なら。こんな気持ちいらなかったのに…。』

『すべてが無意味だとしても。先生がくれたこの気持ちだけは、何か意味があるように思えてならないのです。』

    楽しさㅤ:☆☆☆☆☆
    興味深さ:★★★★☆
    美しさㅤ:★★★★★★★★★★

高校生にして余命2年を宣告された「千田原一花」と、病気を患い後先長くない大学講師「萬木先生」の束の間の物語。

世界で一番美しい物語なので、読んで下さい。本当にお願いします。

絵、描写、人物、台詞、物語。
全てが煌めくほどに美しい作品。
恋や愛、生と死があまりにも自然に、
日常へ溶け出すように描かれている、
完璧な夏の物語。

大半の台詞、場面が美しい為、好きな台詞や場面を選ぶのが非常に難しい。
感情さえあれば好きになれる作品だと思うので、感情あるよって方は是非に。

 

 

夜と海 (全3巻)

夜と海 1 (芳文社コミックス) コミック – 2018/8/9

『 無くても困らないものが欲しい。いつかなくなるものばかりなら、そばにあるのはいつもそういう、大切じゃないものがいい。』

    楽しさㅤ:★★☆☆☆
    興味深さ:★★★★☆
    美しさㅤ:★★★★★

泳ぐ事以外に興味を持たない「内海綾」と人付き合いが苦手で変化を嫌う「夜野月子」の2人の物語。
互いに惹かれ合い、互いを通じて自らを理解しながら、緩やかに変わっていく2人の、高校生活3年間の軌跡。

まず漫画が凄い。日常の描写から普通の漫画とは一線を画している。読めばわかるが、空中を魚が泳いでいる。
絵の美しさが凄まじいが、それだけでなく、2人が自分の感情をゆっくりと理解していく様も非常に美しい。

百合にカテゴライズされそうな作品ではあるが、恋愛感情や肉体的な接触に類する描写は無いと言って差し支えない。
具体的に言うならば、いちゃつくような作品では無い。気にせず手に取るべし。

 

 

 

→長編


→中編

 

 

お勧めの漫画②(中編)

 

 

指標としてはこの記事に記載している「楽しさ」「興味深さ」「美しさ」の3つの要素を軸に、一応各5段階評価にしている。

 

個人差が激しい「美しさ」については、ある程度広めに見ているつもりだが、
「人物」「台詞」「展開」「絵」「愛」「怒り」「詩」辺りを重視している。

 

全てをまとめて紹介すると非常に長くなる為、
物語の長さで3つに分けた。今回は中編。

 

長編:かなり長めのもの。20巻程度を目安。
中編:10巻前後で完結済みのもの、若しくは連載中である程度巻数が少なめのもの。
短編:5巻前後で完結済みのもの。

 

 

アクタージュ (既刊12巻)

アクタージュ act-age 1 (ジャンプコミックス) コミック – 2018/5/2

『役者が手前を蔑むな。お前は勘違いしているよ。手前の美しさを知ることを芝居という。だからお前は役者に向いてるんだ。』

        楽しさㅤ:★★★★★
        興味深さ:★★★★☆
        美しさㅤ:★★★★★

メソッド演技と呼ばれる技法について、類稀なる才能を見出された女子高生「夜凪景」が役者として成長していく物語。
そして、作品の為に人間であることすら辞める天才たちの、覚悟の物語。

演技という特殊なテーマが目を引くが、話の展開は早く、非常に読み易いと感じる。
また、漫画がとても上手い。絵自体も綺麗だが、演出が特に美しい為、映像の美しさを求めている人にもお勧め。

感情とは何か、役者とは何か、幸せとは何か、自分とは何か。
何度も自分に問いかけ続け、答えを探してゆく物語でもある為、それらの哲学が非常に興味深く、美しい。

そして何より、台詞と人物の美しさがとても強い。
好きな台詞は回を追う毎に増えていく。
人物の掘り下げ方もとても綺麗で、かつ人物毎の関係性が深く複雑である為、そういった部分に着目する方にもお勧めしたい。

原作者の不祥事により作品は終了し、販売も停止されている為、話題にも出し難いが、作品に罪は無く、インターネットの片隅であれば大きな問題にもならないと考えて記載した。
この作品の続きが断たれたという事実はあまりにも哀しいが、誰が悪いかと言えば原作者自身と、彼にその業を背負わせたこの世界が悪いので、行き場のない怒りで胸の内を焦がすしか無い。ああ腹が立つ腹が立つ。

 

 

甘々と稲妻 (全12巻)

甘々と稲妻(1) (アフタヌーンコミックス) Kindle版


『意地悪な気持ちになるのと、意地悪をするのは別だよ。それをなんとかやろうとする人がいい人なんだよ。』

        楽しさㅤ:★★★☆☆
        興味深さ:★★★☆☆
        美しさㅤ:★★★★★

母親を亡くした「犬塚つむぎ」とその父親「犬塚公平」、料理人の娘だがトラウマで包丁を握れない女子高生「飯田小鳥」の3人が、料理を作りながら絆を深めていく物語。

家族愛や絆を描いた物語だが、友人との衝突や家族中の不和なども描かれる為、ある程度辛い話はある。料理に関する知識や人間の成長による興味深さはある程度強い。

とにかく人物と関係性、愛の美しさが強い。
しっかり時間が流れる作品なので、他人とぶつかり合いながらも優しく育っていくつむぎと、つむぎと共に緩やかに変わっていく周囲の人間を見ることができる。
心を暖めたい人間に。

 

 

とんがり帽子のアトリエ (既刊10巻)

とんがり帽子のアトリエ(1) (モーニング KC) ペーパーバック – 2017/1/23


『魔法に正解なんて決めないで。こうじゃなきゃダメって決まりなんてない。リチェはリチェになりたいの。
リチェじゃない魔法使いになりたいわけじゃない。』

        楽しさㅤ:★★★☆☆
        興味深さ:★★★★★
        美しさㅤ:★★★★☆

魔法使いに強い憧れを抱く少女「ココ」は、お祭りで怪しげな男から購入した魔法の本に載っていた、禁忌魔法を発動させてしまう。
魔法使いの家系では無い為、本来魔法使いになることはできないココだったが、禁術に巻き込まれた母親を救うべく、魔法使いの世界へと足を踏み入れる。

まず絵が上手い。漫画の表現も非常に多彩で美しい。
話も王道寄りで、主人公が成長する類の作品にしては展開も早い為、楽しさが強い。
かなり解像度の高いハイファンタジーで、魔法に関わる部分だけで無く、生活用品や食品まで現実世界とは異なるものが描かれており、興味深さも強い。
人物や感情、思想や怒りの美しさが強い。

あらすじのみで語れば、魔法に憧れた少女が夢を叶える物語のように聞こえるが、そう単純な話では無く、
魔法使いの少女達が掲げる、美しく優しい理想と、それに翳らせるかのような世界の醜さも同時に描かれている。
理想や優しさだけで無く、人間の悪意や愚かさも描かれており、現実感がある。

ただ、良くも悪くも感情を大きく揺さぶられる為、その点で好みが分かれる可能性は高い。
ある程度の悪意を許容出来れば素晴らしい作品である為、辛いところは何とか耐えて読んで欲しい。

 

 

惑星のさみだれ (全10巻)

惑星のさみだれ 1 (ヤングキングコミックス) コミック – 2006/1/27

 

今家に無いので今度読み返してから書きます。夏からアニメやりますよろしく。

 

 

やがて君になる (全9巻)

やがて君になる (1) (電撃コミックスNEXT) コミック – 2015/10/24

『人は誰かにはなれません。あなたはあなたにしかなれない。』

        楽しさㅤ:★★☆☆☆
        興味深さ:★★★★☆
        美しさㅤ:★★★★★

特別という感情がわからない少女「小糸侑」と、他人からの好意を受け止められない少女「七海燈子」の恋の物語。

百合漫画ではあるが、百合の好き嫌いに関係無く読んで良いと思う。

人物と感情に関する美しさ、興味深さがとにかく強い。
好きとは何か、特別とは何か、自分とは何か。身近な哲学が自然に描かれている。
巻数も丁度良く、纏まりも良い。絵も綺麗。
読み易さと中身の重さを両立した、とても良い作品。

 


Artiste (既刊7巻)

Artiste 1 (BUNCH COMICS) コミック – 2017/4/8


『人がパンと水だけで生きていけるなら、あんたの仕事はいらないでしょ。ジル。』

        楽しさㅤ:★★★☆☆
        興味深さ:★★★★★
        美しさㅤ:★★★★★

料理人の「ジルベール」と、その周囲の人間との物語。
とにかく説明が難しいし、説明しても理解してもらえる気はしない。一先ず読んでみてほしい。

何か欠けた部分を持つ人間同士が、互いに誤解し合いながらも、ゆっくりと理解し合っていく物語。
悪意や理不尽に塗れたこの世界で、少しでも強く、優しく生きていく人間の美しさが描かれている作品だと感じる。
人物や台詞、怒り、愛の美しさが強い。

説明が難しいのであまり書くことがないが、本当に良い漫画なので是非読んでほしい。

 


葬送のフリーレン (既刊7巻)

葬送のフリーレン (1) (少年サンデーコミックス) コミック – 2020/8/18

『それはフリーレン様にとって大切なことなのでございますね。』
『わからない。だから知ろうと思っている。』

        楽しさㅤ:★★★★★
        興味深さ:★★★★☆
        美しさㅤ:★★★★★

勇者ヒンメル一行と共に魔王の討伐に成功したエルフの魔法使い「フリーレン」が、平和が訪れた世界を巡る、旅路の記録。

かなり独特の雰囲気で進んでいく作品。
真面目さや愉快さ、シュールさ、物寂しさから、戦闘描写や恋愛要素などなど、物語を構成する沢山の要素がそれぞれ少しずつ含まれている。
非常に主観性が強い感想にはなるが、楽しい気持ちになり過ぎず、かと言って暗い気持ちになり過ぎる訳でも無い、様々な感情が織り交ぜられたような、独特の浮遊感を覚える作品。

様々な要素が含まれている為、楽しさも興味深さも美しさも強く、多くの人が楽しめる作品だと感じる。
また、それぞれの要素が重過ぎない為、非常に読み易い。

人物や台詞、描写の美しさが強い。あとフリーレンが可愛い。

 


図書館の大魔術師 (既刊6巻)

図書館の大魔術師(1) (アフタヌーンKC) コミック – 2018/4/6

『私はただ、知りたかっただけ。
なぜ空は青いのか。青はどうして青なのか。なぜ鳥は囀り、なぜその声は届くのか。なぜ知らないことに、こんなにも心がときめくのかを。
花の匂い、落ちる阿列布。沈む夕日に、星の煌めき。生きる意義や、恋の不思議と、出産の神秘に、死への畏怖も。私は知りたかっただけ。
世界がなぜ、こんなにも美しいのかを…。』

        楽しさㅤ:★★★★★
        興味深さ:★★★★★★★
        美しさㅤ:★★★★★

本を愛する少年「シオ・フミス」が、本の守護者たる司書(カフナ)を目指す物語。

説明されてもピンと来ないと思うが、ただ手に取ってみて欲しい。

これ以上ないくらいに緻密に作り込まれたハイファンタジーで、常軌を逸した世界の解像度を誇る。
世界の歴史から民族の習慣、特性、思想まで細かく描かれており、興味深さがとにかく強い。

単純に話が面白く、魔法や戦闘の描写もある為、楽しさも強い。絵も漫画も上手。
人物、展開、演出、台詞、愛、怒り、詩、思想など、美しさも強く、種類も多岐に渡る。

全ての要素が高水準であり、興味深さに至っては一線を画している作品。
絶対に読んだ方が良い。読めば理解る。

 

 

メダリスト (既刊5巻)

メダリスト(1) (アフタヌーンKC) コミック – 2020/9/23

『貴方が誰であろうと関係ない…。自分が何者かも関係ない…!俺の分の「一生」を使って、この子を勝利まで連れて行く。貴方に未来は決められない。』

        楽しさㅤ:★★★★★
        興味深さ:★★★★☆
        美しさㅤ:★★★★★

とある事情で夢破れた経験のあるコーチ「明浦路司」と、周囲の子よりも遅れて氷の上に立った「結束いのり」が、フィギュアスケートのメダリストを目指す物語。

話の展開が早く、スポーツ漫画故にわかりやすい楽しさがある。フィギュアスケートに関する知識も多く描かれる為、興味深さも強い。

人物、台詞、愛や詩の美しさが強い。
巻頭のカラーページに毎回掲載されているポエムがとても良い。ポエムがある作品は良い。

楽しさや興味深さが突出しやすい(と私は考えている)スポーツ漫画にしては珍しく、美しさがとても強い作品。多くの人に勧められるスポーツ漫画だと思う。

 

 

 

→長編


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